萌樹月



いつも見ていた街路樹の並木が、あるとき一斉に新緑を芽吹いていたと気付いた。

その塗替えは、ほんの一日の間。

小さな芽が、晴れた暖かい風に導かれて、見慣れた景色に新しい色を加えた。



静かに穏やかに移り行く、確かな変化。

見落としてしまいそうな動きのなかにも、確かに息衝いている命の歓喜。

触れることをためらうような柔らかい葉が、新しい風に伸びやかに開いていく。



季節の遷り変わり、生命の移ろい。

根を張り、風を受け、葉をひらくということ。

ただ受け止めて、表現する、生そのものの持つ自然。

その軽やかさに、ただ驚きと憧れをもって立ち止まらされる。



それは己の自然に逆らわないということ。

仰いだ空を曇りなく映す、清々しい心姿であり続けたいと願う。








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