スノーシープの戦い




 苦闘の末、白いストレイシープ、スノー・ポーとスノー・メリーの奪取に成功。


 今回は長い闘いだった。

 ターゲットは、穴へ崩し落とすのが不可能な、中心へと窪んだ盆地積み。
 かつ出口に高いアクリル囲い。
 そしてアームは回転不可の上、ターゲットの全てが正面向き配置。

 通常左右がシンメトリーで、球状もしくは楕円状のものを持ち上げる場合、
 アームの入射角は中心軸に対し縦に挟むのがセオリーとなる。

 つまり今回は、それも塞がれている。
 かなり手強い。


 戦うなら、持久戦の知恵比べになるだろう。
 本来は、迷わず退く所だ。

 しかし、先日その羊を欲しがった友人の顔が、脳裏をよぎった。
 同日その場にいた私は、それに挑み、敗れた。
 悔しさが、再びゲーマー魂に火を点した。


 端に高い盆地積みの場合、一度外山を崩して、地を荒らす必要が出てくる。
 崩したターゲットの幾つかが、アームに対し、平行になることを期待するのだ。

 一回り大きなアーム。重心のぶれやすい球状ターゲット。
 グリップさえ、うまく固定できれば取れるんだが。


 何回か試みて、あることに気がついた。

 ここは、隣との敷居がない連続台。
 そして隣は小品台。
 つまりはアームも小さい。


 閃きが走った。


 山の端を崩して、隣に転がせないか?
 しかし届くか。山を崩すほどの翼部幅が得られるか。


 届け ・・・・・・ 届いた。


 大き目のアーム設定が、逆に幸いする。
 狙いどおりのターゲットが、隣台手前へと転がった。


 よしっ!


 急いで台を移動。動き出したアームが、横転したメリーを捕らえる。
 が、あと少しのところで中心軸を捕らえきれない。
 転がった距離が、わずかに足らないのだ。

 ガラスケースに沿って、ゆっくり持ち上げられたメリーは、重心がぶれ、
 祈り空しく落下した。

 ぐぅ…



 あきらめない。再び元の台に戻り、もう一度山を崩しにかかる。
 これ以上は、転がるのに必要な高さを保てない。
 これが最後のチャンスだ。

 いけっ!もっと遠くへ!!


 崩れた。一つ、…二つ。


 今度は奥。悪くない。おまえ達、絶対外へ出してやるからな。
 小さなアームは、まっすぐに奥へと向かい、今度はしっかりとと両腕で掴み上げた。

 がっちりホールドされたメリーは、危なげなく空中を移動し、穴の上へ。
 同様に残ったポーを運び、二匹は私の手の中でまた、再会を果たした。



 戦いは終わった。



 原価が200円から300円だろうから、結果としては敵の思惑通り。

 しかし、ささやかなプライドを廻る戦いに、勝利した。
 小さな誇りと歓び。そしてそれらが戦利品。








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