拈華微笑



花曇りの穏やかな午後。

頁を手繰る手が、ふとある言葉の前で止まる。





  拈華微笑(ねんげみしょう)





禅の言葉らしい。

花を手で摘むことを拈華という。

大切な何かを伝えるとき、多くの言葉を紡ぐよりも、

ただ静かに微笑して、手の中の花を差し出す。

それだけで伝わることがある。



伝えたいことは、むしろ言葉にならない。

手に持った一輪の花と微笑み。

心の目が真実を語り、微笑みが愛を伝える。

そんな微笑みのことを、こう呼ぶらしい。



日本語のなんという美しさ。

何かしたくて、筆ペンを取って紙に書いてみた。

一つの言葉との出逢いに、こんなにも豊かになれる。

それが人の心の持つ美しさ。









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