夜韻




夜中というか、既に朝に近い時間。
とても疲れているのに目が冴えて、借りてきた歌に聞き惚れるうちに時を繰る。

夜が音に染み込んでいく。
疼痛にも似た、胸を占める甘い痛み。

どうしてとかなぜかとか、わざわざ問い直して、ただ何かを確認している。
答えなんかなくていい、問いながら漂うのが心地いい。


夜が好きだ。
夜の空気には実体がある。

沁み込むような夜気に、感覚の全てが浸かっていく。
現世のことがどうでもよくなる。

ときどき境界を踏み越えそうになって、その三歩くらい前から、彼岸を覗きこんで。
胸を焦す気持ちを抱いては、身体を持って辿り着けない世界に、少しだけ触れる。


この望郷感はなんだろう。
本当は向こう側に属していると知っている。

そしてあと少しのところで、ぼやけた世界を跨いで戻ってくる。
それがきっと夢の境目。


美しいことも、そうでないことも、みんなここにある。

世界が美しいなんて、わざわざ言わない。
もっと奥から出てくるものを、正視するにはまだ足らない。









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