私自身の内なる「我々」

 

我々の存在と、脳の創りだした分離した自己という現実。

脳の本当の機能は世界を認識して切り取ることなのか?

興味深い内容でした。

英語のプレゼンですが、映像を見ながら訳文を読まれることをおすすめします。



プレゼン映像  / 日本語訳





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[追記]プレゼンの草稿



このプレゼンテーションには原稿(transcript)がついている。

すばらしいプレゼンテーションの理解の一助に、その一部を訳出して紹介する。



TED: “Stroke of insight: Jill Bolte Taylor on TED.com” [transcript]: 12

March 2008



ただし、以下の訳文は最初は読まないでいただきたい。

まずプレゼンのビデオそのものを、(ことばが分らなくても、また全部でなくても)とにかくビデオそのものをご覧いただきたい。

ビデオをご覧になったあとで読むことをお薦めする。



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宇宙の生命を生きる力



我々とは一体何者でしょうか。我々はこの宇宙で命を生きる力なのです。手先の器用さを持ち、二つの考える心を持った力・・・。そして自ら選ぶ力をもった存在。刻一刻の時を、どういう人間になるかということを、そしてまた世界を如何に生きるかということを選ぶ力を持っているのです。今ここで、私たちは意識して右脳の領域に入って行くことが出来ます。右脳、私たちそのもの、宇宙の生命を生きる力、それはまた私を形造っている 50 兆の美しい分子という天才の為せる業なのです。そのひとつひとつが

すべてそうなのです。また、私は左脳の意識領域に入っていくこともできます。あなたとは別の、流れとは別の確たる存在であるひとりの個人になることを選択することもできます。私は Jill BolteTaylor 博士、インテリで、神経解剖学者です。私自身の内部にある「我々という存在」なのです。



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伝える価値のある考え



どちらをあなたは選択なさるでしょうか。どちらを、そして何時? 私たちが、私たちの右脳にある内なる平和の回路に深く入って行けばいくほど、世界にもっと平和をもたらすことになり、この地球がそれだけ平和になるのだと思います。そしてそれは伝えるに値する考えだと確信します。





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ジル・ボルト・テイラー女史のレクチャー「My Stroke of Insight(私のストロークの洞察)」は以下のアドレスより。

   ↓

 http://www.ted.com/talks/view/id/229



脳障害である精神分裂症と診断されていた兄を持ったせいで、私は脳に

ついての勉強をしてきました。妹として、そして科学者として、私は理

解したかったのです。なぜそれはそうなのか。私は私の夢を見ることが

でき、それを現実の中に持ち込むこともできる。そして夢が現実になる

ように働きかけることも--私の兄の脳は、彼の分裂症についてはどう

なのだろう? 彼は彼の夢を普通の分ち合える現実につなげることはで

きないで、それは妄想になってしまう。



私は私の仕事を重度の精神疾患の研究に捧げました。そして私は生まれ

故郷のインディアナ州を離れ、ボストンに移りました。ハーバード大学

の精神科に属すフランキン・ベネス医師の研究室で働くことになったの

です。そして、研究室では、私たちは問いかけ続けたのです。通常のコ

ントロールができていると診断される人々の脳と、精神分裂症、統合失

調性感情障害や躁鬱病と診断される人々の脳との生物学的な違いとは何

なのかを。



つまり我々は基本的に脳の集積回路の解析をしていたのです。どの細胞

がどの細胞とつながっており、どの化学物質につながっているか、そし

て、それらの化学物質がどれほど含まれているかなどです。日中はずっ

とこの手の研究をしていて、私の人生はとても意義がありました。でも、

午後や週末には、NAMI(the National Alliance on Mental Illness=精

神障害市民連盟)の提唱者として飛び回っていたのです。

 

1996年12月10日の朝、私は目を覚ますと、私自身が脳障害を受けたこ

とを知ったのです。私の脳の左半分の血管が破裂したのです。そして、

4時間のあいだ、私は私の脳が、すべての情報を処理していくその能力

を完全に悪化させていくのを見つめていました。出血のあった朝、私は

歩くことも、話すこともできず、読んだり書いたり、私の人生を呼び起

こすことが何もできなくなっていました。私は本質的に、女性の体を持

つ一人の幼児になっていたのです。

 

人間の脳を見たことのある人は知っているでしょうが、二つの脳は明ら

かに別々に分かれています。ここに本物の脳を持ってきましたので、

<男性が脳を持ってくる>「ありがとう」さあ、これは本物の人間の脳

です。これが脳の前面で、巻いたコードが垂れ下がった方が脳の後ろ側

です。そして、これは私の頭の中にこういうふうに位置しています。脳

を見ると、二つの大脳皮質がそれぞれ完全に分かれているのが明らかで

す。コンピュータを知っている方にわかりやすく説明すると、私たちの

左脳がシリアル(連続)プロセッサのような作用をするのに対して、右

脳はパレレル(並行)プロセッサのような働きをします。二つの脳は互

いに、corpus callous=脳梁(左右の大脳皮質、ことに新皮質を結合する

線維の集合したもの)を通してコミュニケイトします。それは3億の軸

索線維からなっています。しかし、それだけではなく、二つの脳は完全

に分かれているのです。なぜならそれらは異なった情報処理の仕方をし

ます。それぞれの脳は、それぞれに違ったことを考えるし、違ったこと

をケアするし、そして、あえて言うなら、それらはまったく違った人格

を持っているのです。<男性に脳を手渡しながら...>「失礼します。

ありがとう。楽しかったです」



私たちの右脳とは、この瞬間のことすべてについてです。それのすべて

は、たった今、ここに関することなのです。私たちの右脳、それは絵で

考え、私たちの体の動きを通して身体的に学びます。エネルギーの流れ

で伝送する情報は同時にすべての感覚システムを通っていきます。そし

て、それはそこからこの今の瞬間というものがどんなふうであるかとい

う莫大なコラージュの中に炸裂するのです。この今という瞬間はどんな

匂いがするか、それはどんな味わいなのか、それはどんな感じがして、

どんな音がするのか。私は私の右脳の意識を通して私の周りのすべての

エネルギーとつながった一つのエネルギー体なのです。私たちは、ひと

つの人類の家族として、私たちの右脳の意識によって互いにつながった

エネルギー体なのです。そして、たった今、ここにいる私たち全員がこ

の地上の兄弟であり姉妹です。この世界をより良い場所にするためにこ

こにいます。そして、この瞬間私たちは完璧です。私たちは全体であり、

そして、私たちは美しい。



私の左脳は、まったく異なった場所です。私たちの左脳は直線的に、系

統的に考えます。私たちの左脳は、すべての過去についてと、すべての

未来についてです。私たちの左脳は、この瞬間の莫大なコラージュを受

け取るようにデザインされています。そして、これらの詳細についての

より詳しい詳細、その中のさらに詳しい詳細を拾い始めます。そして、

それからすべての情報を選り分け、整理します。それは私たちが過去に

学んだことのすべてを結合し、私たちの可能性を未来に投影します。そ

して、私たちの左脳は言葉を用いて考えます。それは、私の外の世界と

中の世界をつなぐ、とどまることのない脳のおしゃべりです。それは私

にこんなふうに話しかける例の小さな声です。「ほら、帰りにバナナを

持って帰るのを忘れないようにね、朝それを食べるのよ」それは、私が

洗濯をしなければならない時に、そのことを思い出させてくれる打算的

な知能です。でも、おそらくもっとも大切なことは、例の小さな声が

「私、私」と私に語りかけることです。そして、私の左脳が「私」とい

うや否や、私は分離されてします。私は単独の、確固とした個人となり、

私の周りのエネルギーの流れ、あなたたちから分離します。



そして、私がストロークを受けた朝になくしたのが、この私の脳の一部

だったのです。



脳梗塞になった朝、私は左目の裏辺りに激しい痛みをおぼえました。そ

れは、冷たいアイスクリームを食べたときにやってくるような、痛烈な

痛みでした。その痛みは私をぎゅっとつかんで、そして離しました。そ

れからまたぎゅっとつかんでは、離すのです。あらゆる痛みの体験は私

にとって馴染みのないものだったので、私はまあオーケーだろうと思っ

て、平常のことをやり始めました。起きて、心臓促進のための機械に乗

りました。それは完全な練習用機械です。そして私はその上ではねてい

るのですが、私の手はまるで原始的な生き物の爪が手すりをつかんでい

るかのようであることに気づいたのです。「これってすごく変」と思い、

私は自分の体を見ました。そして思ったのです。「うわあ、私ってすご

く奇妙なものだわ」私の意識は、通常の現実的な見方から離れてしまっ

たのです。私は機械の上で、このことを体験している人物というところ

から、ある種のエソテリックなスペースにいて、この体験をしている私

自身を観照しているのです。



そして、それらのすべてが奇妙でしたが、頭痛はもっとひどくなってき

たので、私は機械を降りて、リビングルームを横切ろうとしましたが、

私の体の内部のすべての動きがのろくなっていくのがわかりました。す

べての動きが固く、そして慎重でした。私の動きにはどのような流動性

もなく、視覚の領域にこの収縮が起こっていたので、私は内側のシステ

ムに焦点を持っていきました。私はシャワーを浴びるようとバスルーム

に立っていて、体の内側の対話を聞くことができました。私は小さな声

がこう言っているのを聞いたのです「オーケー、だいじょうぶ、あなた

はだいじょうぶだから、落ち着いて」



そして、私はバランスを失い、壁にもたれかかっていました。私は自分

の腕を見ていましたが、もはや体の境界線をはっきりととらえることが

できないでいることに気がつきました。私はどこから始まっていて、そ

こで終わっているのかがわからないのです。というのも、私の腕の原子

と分子は壁の原子や分子と混ざり合っていったからです。私にわかった

のはこのエネルギーだけでした。エネルギー。そして、私は自分に問い

かけました。「いったい私はどうなってしまったの? 何が起こってい

るの?」そして、その瞬間、私の脳のおしゃべり、左脳のおしゃべりが

完全に静止したのです。まるでその瞬間誰かがリモートコントロールの

ボタンを押したかのように--完全に静止しました。



最初はその静かなマインドの内側に自分を見いだしてショックを受けた

のですが、それからすぐに私を取り巻く壮大なエネルギーに魅了されて

しまいました。そして、私はもはや体の境界線がわからなくなっていた

ために、私は巨大に広がっていくのを感じていたのです。私はそこにあ

るエネルギーと一つで、それはすばらしいものでした。

 

そのとき突然、左脳が戻ってきてオンラインになり、私に言いました。

「ヘイ! 私たちは危ない、私たちは危ない、助けを呼ばないと!」そ

こで私は、オーケー、オーケー、私は危険だ、と頷いたのですが、そこ

ですぐさま意識的になり、このスペースを愛情を込めて、陶酔境と呼ぶ

ことにしたのです。ともかくそこは美しいところでした。外側の世界と

あなたをつなげるあなたの脳のおしゃべりから完全につながりをなくし

た状態を想像してみてください。さあ、私はいまそのスペースにいて、

私の仕事上のストレスも何もなしにいます。それらは消え去ったのです。

私は軽さを感じていました。想像してみてください。あらゆる外側の関

係性と、それに準ずる物事からやってくるストレスのすべてがなくなっ

てしまったのです。私は平和を感じていました。37年間の感情的なゴミ

がすべてなくなるなんて想像できますか! 私は陶酔感を得ていました。

それはすばらしいものです。--そこへ戻ってきた左脳がオンラインに

なって言います。「ヘイ! こっちを向くんだ、私たちは助けが必要な

んだって」そこで私は考えます。「そうだ、助けを呼ばないと、そこに

フォーカスするんだわ」。そこで私はシャワーから出て、機械的に服を

着て、アパートの中をウロウロし始めました。「仕事に行かないと、仕

事だわ、運転できるかしら? 運転は?」



その後瞬間的に私の右腕が完全に動かなくなりました。そこで気がつい

たのです。「おー神様! 脳梗塞だ! 脳梗塞だ!」そして次に私の脳

が言ったのはこうです。「わあーぉ、これってすっごくクールじゃない。

カッコいいわ。だってどのくらいの脳学者が自分自身の脳を内側から見

て勉強できると思って?」

 

そして、私のマインドをよぎったのは、「でも、私はとても忙しい女だ。

脳梗塞に関わっている場合じゃない。」その時の私はまるでこんなふう

でした。「オーケー、どっちにしても脳梗塞を止めることはできないん

だから、まあ数週間つき合って、それからさっさと仕事に戻りましょう、

オーケー」

 

そこで私は助けを呼ぶことにし、職場の番号を探しました。番号を思い

出せなかったのですが、オフィスに置いてある名刺に番号が載っている

ことを思い出しました。そこでオフィスの机から3インチの厚みのある

ビジネスカードを引っ張りだし、一番上のカードを見ました。頭の中の

目では自分の名刺がどんなふうかを見分けることができたのですが、そ

のカードが自分のものかどうかはわかりませんでした。というのも、私

に見えたのは、ピクセル(画素)だったのです。文字のピクセルと背景

のピクセルが混ざり合って、シンボルもそうなので、何が何だかわかり

ません。そこで私は明晰さの波というものがやってくるのを待つことに

しました。そして、次の瞬間、私は普通の現実につながることができ、

明らかになりました。それは私のカードではない、それは私のカードで

はない、それは私のカードではない、それは私のカードではない。1イ

ンチ下のカードを引き出すのに45分が経過していたようです。

 

そうこうするうちに、脳内出血は45分間の間に左脳に広がっていったの

です。私は番号が理解できないし、電話もわかりません。でもそれが私

にとって唯一考えられることだったのです。そこで私は受話器を取り、

こちらにビジネスカードを持って、書かれた番号のくねくねした線と一

致するダイアルのくねくねを押すというのを繰り返していました。でも、

それから私は陶酔境に入っていったので、自分が番号をダイアルできて

いるのかどうかがわかりません。



そこで私は無感覚になった右腕を持ってきて、ダイアルしたはずの文字

を隠しては押し、次へということをしたのです。何とか全部の番号が押

せたようです。私は電話を聞いていました。私の同僚が電話に出て、私

に言います「わうううう、わうううう、ううう」【客席から笑い声】私

は思いました。「オーマイゴッド、彼ったらまるでゴールデンリトリバ

ーだわ!」そこで私は彼に話しかけました。頭の中でははっきりとこう

呼びかけたのです。「ジルよ! 助けて! 」ところが声になって出て

きたのは「わううう、わううう、うううう」私は思ったのです「まあ、

何てこと、私ってまるでゴールデンリトリバーだわ」話をしてみるまで

私は自分がしゃべれないことを知らなかったのです。



彼は私が助けを必要としていることに気づいてくれ、駆けつけてくれま

した。その少し後に、救急車が来て、私はボストンからマサチューセッ

ツの総合病院に運ばれたのです。私の体は胎児のようにおり曲がり、膨

らんだ風船の最後の空気がふっと抜けたかのようにエネルギーがグンと

あがったかと思うと、私の魂がサレンダーしたことを感じたのです。そ

して、その瞬間、私はもはや私の人生の振付師ではなくなったことを知

りました。医者が私の体を救ってくれて再びチャンスをくれるか、これ

がおそらく私の次なる生へのトランジッションになるか、二つに一つな

のです。



その日の午後遅くに目が覚めて、自分が生きていることを知ったときは

ほんとうに驚きました。私の魂がサレンダーしたと感じたとき、私は自

分の人生にさよならを言ったのです。そして、私のマインドはいま二つ

の対局にある現実のあいだで浮遊していました。私の感覚システムを通

ってやってくる刺激は、純粋な痛みのようでした。野火のような私の脳

は軽く焼けていて、音がとても大きく聞こえ混沌としています。そのた

め背景の雑音で声が聞こえず、私はただその場から逃げ出したかったの

です。自分の体がどんなふうな位置にあるかがわからないため、自分が

巨大で広がっていくように感じていました。まるで魔法の壷から出てく

るジニーのようです。私の魂は静かな陶酔の深みで滑空する偉大なクジ

ラのように自由に舞い上がっています。調和しています。このとても小

さな体の中に戻っていくなど到底できないだろうと考えていたのを思い

出します。



でも私は気づきました。「でも私はまだ生きている! 私はまだ生きて

いる! そして私はニルバーナを見つけた。もし私がニルバーナを見つ

けて、しかもまだ生きているのだとしたら、生きている人たちの誰もが

ニルバーナを見つけられるじゃない」私はその世界を思い描きました。

そこには美しく、平和で、慈しみを持ち、愛に満ちた人々がいて、彼ら

はこの場所にいつだってやってこられることを知っている。そして、彼

らは左脳から右脳に移って、この平和を見いだしている。そして私は気

がついたのです。この体験は何てすばらしい贈り物だっただろうと。ス

トロークの洞察が、私たちがどのように生きているかを見せてくれたな

んて。このことが私の治癒を促進させてくれました。



2週間半後に医師はゴルフボールくらいの大きさの血の固まりを取りの

ぞきましたが、それが私の言語中枢を妨害していたようです。これは私

の母です。私の人生にとってはほんとうの天使でした。完治するまでに

8年かかりました。

 

さて、私たちは誰なのでしょう? 私たちは、手先の器用さと二つの認

識するマインドを持った宇宙の生命力です。そして私たちは、この世界

で誰として、どんなふうに生きていくのかについて、瞬間ごとに選択す

る力を持っています。たった今ここで、--私--という、私たちがい

るところの宇宙の生命力である右脳の意識の中に踏み入ることができま

す。50 兆の美しい分子の天才的な宇宙の生命力が私を形作っています。

それらのすべてが一つです。あるいは、私は左脳の意識の中に踏み入る

こともできます。そこでは私は確固たる単独の個人としており、流れか

ら、あなたたちから分離しています。私はドクター・ジル・ボルト・タ

イラーで、知的な、神経構造学者です。これらが私の内側の「私たち」

です。



あなたはどちらを選びますか? どちらを? そしていつ? 私は信じ

ます。もしも私たちが右脳回路の、深みにある内なる平和を作用させる

ことを選べば選ぶほど、その平和を外側の世界に投影し、私たちの惑星

はもっと平和になるであろうことを。そして、このことを私はみなさん

と分かち合いたかったのです。

                      

            Jill Bolte Taylor(ジル・ボルト・タイラー)








 

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