プルメリアの伝説





 

大好きな花がうちに来た。

甘い香りのプルメリアの花。



バリに住んでいた頃、うちの庭にはこの樹がたくさん生えていた。

毎朝花を落として、庭の祭壇にはこの花が絶えることがなかった。



インドネシアでは「Frangipani」と呼ばれていた。

花言葉は「気品」「情熱」「熱心」「恵まれた人」等。

私にとっては、南国の思い出の香り。



さっそく大きな鉢を買ってきて植え替えてあげた。

満足。また植物が増えた。今日はこの花とお話しよう。







この花にはある伝説がある。



”昔々、とても立派な王様が治める平和な豊かな島があった。

島民は皆つつましく、幸福に暮らしていた。



一方その隣には、野心家の将軍が治める、戦争好きな強大な島があった。

その将軍は、この隣国を征服しようと考えていた。



ある年、この平和な島に真珠のような白い姫君が生まれ、

やがてとても美しい王女に成長した。



その機を待っていた将軍は、王様に書状を送った。

”貴国の美しい王女を、私の嫁にいただきたい。そして同盟を結びたい”



賢明な王様は、これが策略であることを見抜いていた。

しかし、断ったところでただではすまない。



困った王様は月を見上げて嘆いた。

月はこの嘆きを聞き届け、王様にある申し出をした。



「王よ、これは運命というものです。王女は私が月の世界で預かりましょう。

そしてあなたは隣国の将軍を迎え撃つのです。私は天空からあなたの幸運を祈っています」



そして月は王女を月世界に引き取り、王様は戦いの準備を始めた。

返事の来ないことにいらだった将軍は、軍隊を率いて島にやってきた。



王女の行方は誰に聞いても分からない。

将軍は腹を立て、この島に宣戦布告をした。



それから一ヶ月の間、美しい島では凄惨な戦いが繰り広げられ、

小さな島の軍隊は全滅し、王は首をはねられ、島は将軍に征服された。



月の世界からこの戦いを見届けた王女は悲しみに打ちひしがれ、

空から毎日たくさんの涙の雨を降らせた。



そしてある日、月にこう言った。

「私は、島へ戻って人々の魂を鎮めたいのです」



月は王女の決心が固いことを知ると、彼女を島へ戻した。

そして戦死者たちの亡骸の横で涙する王女の姿を、白い可憐な花を咲かせるプルメリアの樹に変えた。



今でもこの島では、白い花の甘い香りが途絶えることはない。”







そんなお話でした。

プルメリアは、無邪気で明るくて、そんな悲しいお話とは無縁のように咲き誇っています。

それではプルメリアとのお話はまた次回に持ち越し。











 

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