陽の目の道


日の出の水平線のすぐ上に厚い雲があると、せっかく一度昇ってきた太陽が遮られて、真下にしか光がささない。
するとそこには木洩れ日のような、海に光が差すスポットが現れる。

あの、朝日が遮られて生まれる残照の木洩れ日のような現象をなんと言うんだろうと思い、気になって調べてみた。


夜であれば月の道と呼ばれる、海上の月の反射光の筋を指す言葉がある。
しかし真下にだけ向かう光を指す言葉は見当たらない。

また例えば夜明けのことを東雲と呼ぶ。
不思議な当て字だ。
原始的な住居は篠竹を粗く編んだ編目から採光していたので、夜明けになると篠の目から光が射し込む。
それが転じて、夜明けそのものをシノノメと呼ぶようになった。
東雲の字は後から当てたものらしい。

西洋なら、雲の切間から射し込む幾筋もの神々しい御光を指して、ヤコブの梯子(天使の梯子)という呼び名がある。
旧約聖書に由来する、天と地を天使が行き交うための階段のことらしい。

どれも遠い。

そういえば先日台風が来て、台風の目の中に入ったとき、僅かだが陽の射す時間があった。
ひょっとするとあの光の真下はあんな感じだろうか。

見上げれば天に続く道。
そこにだけ指す雲間の光。
雲の目を貫く陽の道。

ならば私はあの海に立つ光柱を、陽の目(ヒノメ)の道と呼ぼう。

と独りごちて納得する。
自分だけが使う言葉リストが一つ増えた。











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