動けなくなるまで走り切って、こっちじゃなかったって方向転換するやり方もあるけど、ゆっくり舵を切りながら、行き先を探したっていい。
その分沢山景色を見られたら、存外豊かな旅になる。
人間は案外愚かだから、行き止まりまで行かないと止まれない。
結局反対側まで全部見ないと、自分の理解を一周出来ない。
一周しないと螺旋が上がらないものだから、ずっと同じフロアをさ迷うことになる。
幸せばかりを追いかけても、怖いものばかりを避けていても、半周しかできない。
どうせ、全部見なけりゃならないなら、一つずつ丁寧に見たらいい。
ゆっくり行こう。
どの道長い旅の途中だ。
そう思えるくらいにはペースが弛んだ。
本当は誰かのためにしなきゃならない事なんて何もない。
そう思えたら、誰かのために働くのも悪くない。
自分一人の喜びの出口は一人分。
出口が多いほど、無限に近づく。
一人分の幸せは、自分に受け取ることを許した量。
それ以上の幸せは、宇宙(他者)に与える量で決まる。
なんだか呼吸に似ている。
吸気は自分の吸い込める分しか吸えないが、吐く息は無限の宇宙に触れている。
僕等は呼吸を通して、一人分以上の全体の一部を生きている。
そしてそれは最初からずっと、切り離されたことがない。
吐く息を出し惜しむと、胸いっぱい吸うことが出来ない。
呼吸が浅くなると、元気がなくなる。
与えるものが少なければ、入る器も広がらない。
それは不幸を避けて、小さな幸せ以上を求めない生き方に似ている。
深呼吸しよう。
喜びも痛みも悲しみも、全部分けずに吸い込んで、胸いっぱいにして吐き出そう。
全部吸い込めば、全部出せる。
そうして自分を空っぽにしたら、残った透明なキラキラしたものが、ずっとあなたを満たしていたことに気が付ける。
清らかな冬の朝に、輝いているような見えない光が、自分の中を満たしている。
それは宇宙全体を巡っている風で、あらゆる生命を生かしめている見えない力。
宇宙の呼吸。
何も残さず、何も掴まず、今までの全てを乗せて吐く。
何も望まず、制限せず、入って満たしていくものに明け渡す。
怖がらないでいることは難しい。
でも力を抜いて降参してゆだねたら、水の上に浮くように、宇宙が支えてくれる。
そうしたらただ流れて行けばいい。
どの景色も、見たことのない世界は美しい。
きっとそうでないものも含めて。
"早く行きたければ一人で行け
遠くまで行きたければ皆で行け"
アフリカの諺
0 件のコメント :
コメントを投稿