弔い


私を知る人は、財布や携帯や眼鏡を入れるため、私の腰にぶら下げられた二つの小さなバッグを覚えているかもしれない。
二十数年来、色々な体験を共にした相棒だ。
実のところ、バッグ本体は既に擦り切れて二代目(片方は三代目)になっている。
唯一残ったそれらを繋ぐ腰のベルト部分が、今日擦り切れた。

相棒の最後の欠片よ。
とうとう君も逝かれたか。

自然に離れていくまで共にあったものは、純粋な愛のまま透明な場所に帰っていく。
天(から与えられた)命を共に生きてくれてありがとう。

そういう細やかな静けさに満ちた絆は、とても強くて、温かな信頼を伴う。
信頼とか愛着とかいう言葉を越えて、何も言わずとも寄り添えるもの。
そこにあることに疑問を持つことさえなく、振動を共有するもの。

本当はあらゆる人やものと、そういう付き合い方をしたいと願っている。


闘病していた古い友人が、一昨日カナダで亡くなったことを知った。
きっと地球との絆が透明になるまで、ここでやり切ったのだなと直感した。
悲しは愛(かな)し。
透明な哀しみは、悲しくても痛くないのだ。
それは多分、愛と同じものだから。

ありがとう。
またいつか、輪廻の何処かで。







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