冬の日の朝は凛として冷たくて、叩けば薄く凍った透明な空気が音を立てそうな、そんな境界の薄さを持つ。
吸い込む息の中に潜む冬のキラキラと輝く欠片が、呼気に乗って地球の裏側まで吹き抜けていく。
体温を奪われないように少ない言葉で小声で話すときのように、自分の扉を全部は開けない。
そうやって守る自分の世界の温度は少しだけ愛しさを増して、誰かに分けてあげたくなる。
自分のいのちの温度が身近になる時、誰かのいのちの温もりは前より愛おしい。
きっと寒いから近づく距離というものがある。
雪の中に六花(むつのはな)を見る感受性は、咲くはずのない冬の花を見つける力。
足りない時に近づくものは、よく似たものを本物に変える。
そうであってほしいという願いはいつか、それよりも美しいものを手元に残す。
冬の心は炬燵(コタツ)みたいだ。
半分は見えないところに隠されている。
一番暖かい部分は、外には出せない場所にある。
隠されたまま、誰かが入ってくるのを待っている。
寒ければ寒いほど自ら開いたりはしないけれど、もし来てくれるなら、それは分かち合える最も内側の場所になる。
雪溶けを待つ雪割草は、雪の下で蕾を育て、待ちきれぬ思いはいつか、おひさまを迎えにいくだろう。
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