非常に希望に満ちた試みと提言だと思います。
転載しておきます。
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2050年までに「再生可能エネルギー100%」は実現できる!
世界で利用されているさまざまなエネルギーを「100%!」再生可能なエネルギーで供給する。
「そんなこと、出来るわけがない」と思われるかもしれません。
WWFは2011年2月3日、エネルギーに関する新しい報告書『The Energy Report - 100% Renewable Energy By 2050』を発表し、「再生可能エネルギー100%」の実現が経済的、技術的に可能であることを示しました。
再生可能エネルギーの可能性を検証
地球温暖化を防止するためには、その大きな要因とされている二酸化炭素(CO2)の排出を大幅に削減しなくてはなりません。 そのためには、排出源となっている石油・ガス・石炭に由来する化石燃料から得られるエネルギーの使用を抑え、風力や太陽光などによって生み出される「再生可能エネルギー」の利用を拡大してゆく必要があります。
しかし、エネルギーの転換については、既存の産業構造にも大きく影響することから、現状の利用を抜本的に変えることについては「実現性が無い」として、既得権を持つ現在の産業界を中心に、反対の声が今も強く残っています。
こうした見解に対する、一つの提案として、WWFは2011年2月3日、エネルギーに関する新しい報告書を発表しました。
このレポート『The Energy Report - 100% Renewable Energy By 2050(エネルギー・レポート~2050年までに再生可能エネルギー100%)』は、2050年までに世界のエネルギー供給を100%、再生可能エネルギーでまかなうことが可能かどうかを検証し、経済的、技術的に、それが実現できることを示したものです。
「再生可能エネルギー100%」へのビジョンとシナリオ
レポートの内容は2部構成になっています。
第1部では、今回の検証に基づいて示された、WWFの「再生可能エネルギー100%」ビジョンを説明。第2部では、その実現性の裏づけとして、エコフィスの分析に基づいたエネルギー・シナリオを示し、新しいエネルギー社会の実現に向かうための筋道を明示しています。
エコフィスは、今回WWFが調査を委託した世界の気候・エネルギーに関するコンサルタント企業で、本レポートで発表したそのシナリオは、温暖化防止に関する従来のさまざまなシナリオよりも、さらに踏み込んだ内容となりました。
まず、現在14億人が電気のない生活をしています(*)が、このシナリオでは、2050年までに、地球上の全人口が電気を主要エネルギーとして利用することを前提としています。
また、新技術については不確定要素があるため考察の対象とせず、既存の技術を活用することで、どこまでエネルギー需要を減らしCO2の排出削減を達成できるか。対象となる各分野において、経済的なコストとベネフィットを分析しました。
IEA, World Energy Outlook 2010, Paris: IEA
既存技術の普及拡大だけで「再生可能エネルギー95%」の実現が可能!
エコフィスによるシナリオは、大きな2つの課題に応えるために作成されました。
1.世界全体および各部門でエネルギー需要をどこまで減らすことができるか
2.その需要に見合ったエネルギーを、風力、太陽光などの持続可能な再生可能エネルギーで全て供給することができるか
これらの課題に応えるために、エコフィスは、既存の技術を前提としつつ、以下の5つのポイントに沿った形で、2050年までのシナリオを現実的に描くことができるかどうかを検証しました。
・省エネルギー対策の徹底により、世界のエネルギー需要を可能な限り減らす
・需要側の各部門(産業、建築物、運輸)で可能な限りの電化を進める
・電力の需要を持続可能な再生可能エネルギー源で最大限まかなう
・電化が難しい部分(熱および燃料用途)は、太陽熱など他の再生可能エネルギー源でまかなう
・バイオマスエネルギーは最後の手段とし、他の再生可能エネルギー源ではまかなえない部分に回す
その結果、まず、これまでに行なわれてきたどの検証の結果よりも、大幅なエネルギー需要の削減が可能であることが明らかになりました。
「ガマン!」ではないエネルギー需要の削減
ここで注意しなければいけないのは、ここで「需要の削減」といっているのは、「将来、車での移動が必要になる人たちの利用を制限する」「モノを作らないようにする」といった形でエネルギーの消費量を下げることではないということです。
「車を走らせる」「モノを作る」「建物を暖める/冷ます」など、エネルギーを必要とする活動の将来のニーズにはきちんと応えつつ、それでも、エネルギーの合理的な使い方や省エネ技術の普及によって、実際の使用量を減らす、つまり、エネルギーの需要を減らすことはできるということを示したのです。
そして、このエコフィスによる検証の結果が明らかにしたさらに重要な点は、既存の技術を普及させ、再生可能エネルギーが理論的に普及しうる量を全部使わなくても、「2050年に再生可能エネルギー95%」を実現することが可能である、とする点です。
再生可能エネルギーの利用には現時点ではさまざまな課題があります。
たとえば、太陽や風などの自然に依拠するため、発電が不安定だというのも、よく挙げられる課題です。変動がある電源であるため、既存の電力網に対して風力や太陽光から電気を供給するときに調整が必要になる場合があるからです。
しかし、今回のシナリオでは、そうした障害も考慮して、太陽光や風力などが使える量に一定の制限を想定したとしても、95%まで再生可能エネルギーで必要なエネルギーを供給できることを明らかにしています。
これは、今現在、世界で既に利用されている、風力や太陽光を使ったエネルギー獲得のための多様な技術を組み合わせ、「再生可能エネルギー源ミックス」を実現することで、石油や石炭、また原子力といった現在主に使われている旧来型のエネルギーを、ほぼ完全に代替することが可能であることを指摘するものです。
「再生可能エネルギー100%」を実現するために
こうした取り組みの結果として、世界のエネルギー消費によって排出されているCO2の排出量も2050年に80%以上(1990年比)削減されることになると試算しています。
また、このレポートでは、エコフィスによるシナリオの達成のために、世界各国は多くの設備投資を求められることになるものの、そのコストは長期的に見ると、燃料費の削減や消滅、運用費の削減により、完全に回収されるばかりか、利益が生じることも指摘しています。
WWFでは、このシナリオをベースに、既存の技術の活用に加え、新しい技術を上積みしていけば、2050年までの「再生可能エネルギー100%」が、経済的、技術的に、十分に実現可能である、と考えています。
もちろん、そのためにはエコフィスのシナリオをさらに発展させてゆかねばなりません。特に、「再生可能エネルギー95%」の道のりを描いて見せた、エコフィスのシナリオに欠けている「5%」を実現するためには、このシナリオには描かれていない、水素エネルギーなどの新しい技術の開発・実用化が必要になります。
また、世界が再生可能エネルギー社会へと移行していくためには、エネルギー効率の向上と再生可能エネルギーに対する投資を促すような、確かな政策も必要です。
そのため、国には長期的な視野に立った、投資サイクルを実現する、法律的な枠組みを構築することが求められるでしょう。
WWFは地球温暖化防止のために「再生可能エネルギー100%」の実現を目指して、今回のレポートを活用し、各国政府および産業界に対して、新たなエネルギー政策とその対応のための挑戦を、これからも呼びかけてゆきます。
関連リンク
記者発表資料 2011年2月3日 WWF『エネルギー・レポート』を発表 2050年までに100%再生可能エネルギーは実現可能!
レポート全文のダウンロード
英語版:オリジナル全文 (PDF形式:15MB)
日本語版:要約(PDF形式/1.7MB)
関連リンク
「再生可能エネルギー100%」を実現する10の提言
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「再生可能エネルギー100%」を実現する10の提言
2050年までに世界を「再生可能エネルギー100%」に
地球温暖化をくいとめるためには、石炭や石油などの化石燃料に大きく依存した、現在の世界のエネルギー事情を大きく転換する必要があります。
WWFでは2011年に、そのための道筋を明らかにするエネルギーシナリオを作り、報告書『The Energy Report - 100% Renewable Energy By 2050(エネルギー・レポート~2050年までに再生可能エネルギー100%)』で明らかにしました。
このレポートに基づき、WWFでは2050年までに「再生可能エネルギー100%」の世界を実現するため、10の項目について提言を行なっています。
「再生可能エネルギー100%」に向けた10の提言
エコフィスのシナリオが提示した将来像を更に推し進め、「再生可能エネルギー100%」の将来を実現していくため、WWFは以下の10項目を提言しています。
▲『The Energy Report - 100% Renewable Energy By 2050』
に基づいた、2050年までの世界のエネルギー供給内訳の変遷
クリーン・エネルギー
最もエネルギー効率の高い製品のみを普及させること。 また、2050年までに全ての人に十分なクリーン・エネルギー(CO2の排出を抑えたエネルギー)を供給できるよう、既存および新たな再生可能エネルギー源の開発を行なうこと。
送配電網
送配電網および取引を通じて、クリーン・エネルギーの供給と売買ができるようにすること。そうすることで、さまざまな地域という壁を越えて、持続可能なエネルギー源を最大限に有効活用することができます。
全ての人のエネルギーへのアクセス
世界の全ての人が、クリーンなエネルギーを使えるようにすること。今現在、電力を使っていない途上国の人々を含め、全ての人に電気を供給し、効率的で持続可能なエネルギー利用を推進すること。
投資
再生可能でクリーンなエネルギーとエネルギー効率の高い製品や建物に対する投資を行なうこと。
食糧
食糧を粗末にしないこと。土地を自然の状態に近づけ、持続可能な林業やバイオ燃料の生産を行なうために、効率的かつ持続可能な方法で生産された食糧を選択すること。また、全ての人が持っている、健全な食生活に欠かせないたんぱく質を摂取する権利を守るため、富裕層は肉の摂取を控えてゆくこと。
材料
廃棄物を最小にし、エネルギーを節約するために、リデュース・リユース・リサイクル(減らす・繰り返し使う・再資源化)を行なうこと。耐久性の高い材料を開発すること。もちろん、必要のないものは作らない。必要のないことはやらないようにすること。
輸送
エネルギー効率のよい公共交通が、より広く利用されるように、また、人やものの輸送距離を減らすことができるように、インセンティブを提供すること。可能な用途に対しては電化を進め、電化がむずかしい船舶・航空分野に対しては、水素燃料や他の代替燃料に関する研究を支援すること。
技術
エネルギー効率と、再生可能エネルギーの研究開発を促進するために、国のレベルで、また二国間、多国間で、行動計画を策定すること。
持続可能性
再生可能エネルギーの拡大が「環境の保全」および「開発」の目標を、確実に両立できるようにすること。そのための厳格な持続可能性基準を策定・施行すること。
国際社会の合意
再生可能エネルギーを拡充し、エネルギー効率を向上させるために、世界の協力を促し、またその指針となるような、積極的な温暖化防止・エネルギー合意(「京都議定書」に続く次期枠組み合意)を支援すること
世界をリードする国や企業の挑戦
この提言の内容には、すでに広く知られている事も多く含まれていますが、実際に実現してゆくことは、決して容易なことではありません。
それでも、世界では、こうしたポイントをしっかり踏まえて事業や政策に取り組む企業や国の政府が、次世代の国際社会と経済・産業活動をリードする存在になると見られています。
既存の権益や体制に捉われずに、未来に向けたビジョンを持つことができるか。 それは、温暖化対策に取り組む上で欠かすことのできない、重要な視点なのです。
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