此処でない何処かに帰りたかった
何故この世界は完全ではなくて、いつも少し足りないのか分からずにいた
その隙間を埋めるように、いつも言葉と音楽は表れる
一時隙間を埋めて、また染み込んでは消えていくもの
音楽は暗渠を流れる水のようだ
視えなくても、それが無ければ世界は渇く
言葉は見えない川を捜すための光
それが照らす分だけしか、足元を確かめて歩けない
誰かの足跡を探して、言の葉の森を歩く
風の中に音色を見つけては立ち止まる
詩と音楽は、かつて賢治が"透き通った本当の食べもの"と呼んだもの
それらを材料に、皆が食べられる形にしたエーテルの食事
言葉も音楽も、偉大なものはその源からやってくる
僕等はその水を、それぞれの器に受けて流すだけ
与えることだけが導く光の川がある
その源に触れているときだけ、乾いた川には失われない水が溢れる
愛から来たものだけが、形を変えて廻り続ける力を持つ
すべての言葉と音が分解されて、粒子と波だけになっても、宇宙はその愛を覚えている
だからその音を口ずさむ。
その言の葉が、いつか透明に透き通ってしまうまで
いつかこれらの言と音(コトトネ)が、世界の最も精妙な粒子を纏い、永遠に残る波に変わるまで
言の葉の森を歩く
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