「あなたの身体にある原子は、すべて爆発した星々からやってきたものだ。あなたの左手を構成する原子は、おそらく右手のものとは別の星からやってきたものだろう。これは私が知るうちで、物理学に関するもっとも詩的な事柄だ。あなたは星屑なのだ。」
ローレンス・クラウス
数式は宇宙を描くための形容詩なのだと言った物理学者に、昔会ったことがある。
言い得て妙だなと思った。
数字は比較的ニュートラルな言語ではあるけれど、言葉と同様に、宇宙を描くには色が足りない。
それでも僕等は真理に触れたくて、その手を伸ばしてしまう。
拙い言葉で世界を描き取ろうとする。
本当のものは目には見えない。
目に見えないもの、言葉にならないものを形にするために、人は知性と感性で宇宙に触れてきた。
その営みは美しくて、その願いは結局私達自身に触れていく。
私達の中にある星屑。
覗いているのも覗かれているのも私。
宇宙は私だ。
爆発して広がり、また一つに戻る。
永遠を巡る宇宙の呼吸。
右手と左手すら、同じ星屑で出来てはいない。
私達は一つだった自分を、互いに覗き込むための同じ宇宙の眼。
自分自身を抱きしめるためのお互いの腕。
付いたり離れたりを味わうために、幾つもに別れた星々の欠片。
呼吸するとき、空を仰ぐとき、あなたの目を見ているとき、
交わっては結び、離れていく星の欠片がある。
私達をつなぐ見えない欠片。
絲(いと)しさはきっと、そこからやってくる。
"謙虚であれ あなたは土塊から生まれた
気高くあれ あなたは星の欠片なのだから"
セルビアの諺
0 件のコメント :
コメントを投稿