半分本当


母子家庭の子が成長する過程で、見たことのないお父さんのことを訊いたりすることがあるよね。
仮にもしその場面に自分が居合わせて、母親側がそのことを言いたくないときに、なんて言ったらいいかっていう思考実験を漠然としていたんだけど(何故?)図らずも面白いのが出来たのでシェアしとく。




★★ちゃん(仮)こっちにおいで
とても大事なお話が一つある。
内緒に出来るかい?(周囲確認)

実はあなたのお母さんはね、確認されているだけで歴史上世界に20人しかいない、お母さんだけで子供を産んだ人なんだ。
君はその特別な子供なんだ。

この星では稀にそういう子が生まれることがあるんだ。
そしてそういう子供は、時々世界をひっくり返すようなことをやってのける事がある。
文明レベルを飛躍させるような発明とか、人類意識の急激な啓蒙とか。
あまりに大きな影響を文明に与えるため、今権力を持ってそれを行使している人々からは怖れられてきた。
だからそういう子達は生まれると同時に、親子とも連れ去られたりして危険な目に遭ってきたんだ。
今も人知れずそういう子達を探している人々がいる。
大きな国の諜報機関とかね。
ああ、大丈夫だよ、カンパニーとビュローの連中はさっき撒いてきた。

私はそういう子達を彼らより早く見つけて、保護するために来ている銀河連合の保護官だ。
私達も未来の有望な人員を減らされては困るのでね。
シード達には然るべき時が来て目覚める時まで、安全に過ごせるような対策を持っている。
既にこの見えないシールドを君の種に貼らせてもらったよ。
いつか君が、君自身より大切なものが見つかったとき、この封は自然に剥がれるだろう。
その時は私達にも君が目覚めたのが分かる。
君のお母さんにも、安全のため少しだけ別の記憶を付け加えさせてもらった。
本当はいないお父さんの記憶をね。
だからこれは、君と私の間だけの内緒の話だ。
お母さんはきっとお父さんのことをよく覚えていないって言うから、それ以上訊かないであげてね。
記憶の封が取れるときっと混乱するから。

内緒のお話はこれでお終い。
君はたくさんの愛に見守られている、特別な子なんだよ。







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