カッパドキアからシャンルウルファ(ギョベクリテペの最寄り都市)へはバスを乗り継ぎ長距離移動する。
午前中からしっかり準備して出たのに、最初のバスが大幅に遅れて到着。
トランジットに30分余裕を見たにも関わらず、乗り継ぎに失敗。
チケットを買い直し、2時間後のバスに乗るもまた動かず。
整備不良を疑いながらもようやく出発すれば、やはりハイウェイ途中でバスは停止した。
男性陣が後ろのエンジン扉を開けて整備している。
この頃にはもう自分も状況を楽しみ始めている。
こういうときは抗っても仕方がない。
無駄に感情コストを浪費するよりは、降参してゆだねた方がいい。
日がくれてようやく動き始める。
目的地シャンルウルファへの到着は結局深夜2時。
実に5時間の遅れで私達は既に憔悴していた。
深夜のタクシーはなかなかつかまらず、つかまっても英語が通じない。
しかしそういう時は決まって通りかかったおじさんが助けてくれる。
トルコの天使達はだいたいおじさんの姿をしていて、皆とても親切だ。
タクシーに必要な目的地の場所を翻訳して伝える手伝いをしてくれ、なんとか乗り込むことが出来た。
これ以上車は入れないのでは?というような細い路地奥でタクシーを降ろされて、あとは近いから歩けという。
真っ暗な旧市街の路地裏は、モロッコの街迷路を思わせる。
高い石壁に囲まれた細い石畳は、天井のないダンジョンのようだ。
真夜中で誰も居ないことが少しの安心でもあり、怖くもあり。
初めて来る異国街の、深夜の路地裏の冒険感はなかなかに洒落にならない。
すぐ近くにあるはずのホテルの扉がどれだか分からない。
そして何故かホテルの予約返信メールには電話番号がない。
これ本当にここにあるんだろうな?と疑い始めた頃、バイクに乗ったおじさんがまたもや現れる。
2メートルほど通り過ぎて、止まって振り返るエンジェル。
ホテル名を告げると何処かに電話してくれた。
路地の陰から扉の開く軋んだ音がする。
少年にも見える男性が奥から現れた。
予約のメールを見せる。
「このホテルはここで合ってる?」
深夜に起こされたためか愛想のない顔ではあったが、彼は確かに頷いた。
念のため24時間レセプションの開いていると書いてあったホテルにしておいて本当に良かった。
深夜の冒険にドキドキはしたが、不思議と守られている感じがずっと消えなかった。
トルコのフレンドリーな天使達には感謝しかない。
岩壁をくり抜いたような美しい部屋に案内され、ようやく一息ついた頃には深夜3時を回っていた。
ここは古民家をリフォームしたホテルだと翌日聞いた。
石造り文化のトルコの古民家はもはや遺跡に等しい。
事実、別棟のフロアはガラス張りで、床の下に見える基礎は遺跡のようにしか見えなかった。
一夜明けてみれば、昨夜の迷路のような街並みも美しい。
朝も寝ていたかったので、朝食の時間まで休んでいた。
もはや当初の予定など無意味なので、今日はフリーの一日にする。
ギョベクリテペ遺跡の予習を兼ねて、考古学博物館に行くことにした。
いよいよメソポタミアの懐に入る。
長旅に付き合ってくれる子供の慰労を兼ねて、午前中は公園を探して散歩に出る。
ホテルのオーナーの甥という子が案内してくれたのは、大預言者アブラハムの生誕地公園。
違う、そうじゃない。
子供達が遊ぶ遊具とかがあればそれで良かったのだ。
だがありがとう。
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の祖とも云われる大預言者アブラハムは、この地の洞窟で生まれ、ここはメッカに次ぐ巡礼地となっているそうだ。
聖なる魚が泳ぐとされる池で子供が餌をあげている間、私が飲み水を買いに行って帰ると、奥さんが別の天使おじさんと談笑している。
なぜか日本人はとりわけトルコ人と親和性が高いようだ。
どこに行っても非常に暖かく迎えてくれる親日家に会う。
事実この数日、日本人というだけで優しくしてくれたトルコの天使達は両手に余る。
ひょっとしたら皆にそうなのかもしれないが、それなら尚更驚くべき国民性だ。
預言者の生誕地公園にいたおじさん天使は、一頻り自分のことを話すと、私達に公園を案内してくれると言う。
私たちにアイスクリームを奢ってくれ、さらにはお茶を勧められたが丁重に断り、なお自然にアブラハムの生誕洞窟へと案内してくれる。
後からガイド料とか要求されるんじゃないかと、私の汚れた心によぎるものはあったが、まったくそういう絡みつくオーラがない。
本当に純粋なホスピタリティのようだ。
行く予定のなかった世界最大級の巡礼聖地へと案内され、計らずも祈りの機会を得る。
たとえ私の信仰ではなくとも、多くの人々がとても大切に思う聖地であるならば、そこには敬意を払いたいと思った。
ガラス越しに大預言者の生誕地点を臨みながら、座って祈る。
色々な思いや色がそこに集まっていた。
個人的にはベクトルを持つ想いは祈りではないと思っている。
だがその一点に向かう人々の思いは、なんだか純粋な強さと美しさを持っていて、それは嫌じゃなかった。
外の太陽光は熱さを増して、公園を歩くのも少々しんどくなってきた。
天使おじさんは子供が遊べる室内の遊具施設のあるショッピングセンターへの行き方を、周りの別なおじさんに尋ねている。
およそ初対面であろう人々同士の、ごく当たり前で自然なコミュニケーションを間近に見る。
おじさんはここなら午後安心して子供を遊ばせることができると、笑顔で爽やかに送り出してくれた。
なんて、気持ちのいい人々だろう。
彼等に対する敬意ゆえ、もう騙されてもいいから疑わないでいようと思った。
巨大なショッピングモール内の、小遊園地的なゲームセンターで子供と一頻り遊ぶ。
考古学博物館は道を挟んでその対岸にある。
こちらも巨大な敷地に密度の濃い展示と研究物が並ぶ。
個人的に知りたかったのは、太古シュメール文明において、イシュタルやイナンナの女性性を代表する女神の影響がどのくらいあったのかとか、今に続く人類の祖アヌ王とエンキやエンリルの影響。
シュメール神話は世界神話の祖とも云われる。
翼と獣の体を持つ王の像(エンリル?)や、同じく翼持つ女神像に惹かれた。
明日行く予定のギョベクリ・テペは、人類最古の約13,000年前の遺跡だという。
地球は約13,000年周期で分離とユニティの振り子を繰り返している。
その移行期間は大体500年とされ、つい最近その真ん中の折り返し地点を跨いだという情報がある。
これから地球はユニティ(統合)のバイブレーションの拡大期に入る。
13,000年前、私達のこの分離を前提とした文明は始まり、今に至る。
BC13000頃の彗星接触による大洪水から氷河期を経て温暖化による陸地の水没。
生物の大量絶滅によりそれまでの豊かな狩猟採取生活が維持できなくなり農耕の始まりへ。
結果、所有の概念や貧富が生まれ、権力と分離の時代へと突入していく。
私達の知る人類の歴史はたったこれだけなのだ。
今のバイブレーション移行期の、ちょうど振り子の真裏にあたる時代。
この分離文明の黎明期に、人々は何を思い何を残したのか、地球のバイブレーションはどんなだったのか。
そのヒントがこの遺跡には残っているんじゃないかと思っている。
楽しみにして明日を待つ。
おやすみなさい。
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